愛しのろくでなし パム・ヒューストン 鷺沢萠訳
愛しのろくでなし(COWBOYS ARE MY WEAKNESS)
Pam Houston
翻訳:鷺沢萠
講談社
1800円
1994年5月31日第一刷発行
ハードなアウトドアと女のグチャグチャ
12編の短編集。鷺沢萠が訳したというので手にとってみたのだが、端から端まで読んでさて、と思ったのが、原作者の姿が見えないことである。
確かに鷺沢の著作物の一つとして手にしたのだが、読み終われば原作者が気になるというものである。ところがどこにもいない。本を手にとってあちこち眺めてみるといた。
「PAM HOUSTON」と表紙に書いてあった。これが作者か。あまり前面に押し出されてはいない。やっぱり有名人の勝ちなのだ。PAM HOUSTONよりも鷺沢で売らないと、ということだろう。けれど全ての作品を読み終われば原作者が気になるものではないか。
ネットでパム・ヒューストンをサーチしてもあまり芳しくない。そこで「PAM HOUSTON」でやり直すと出てきた。英文でだが。けっこう著作物が出ていてファンもそれなりにいる作家のようだ。ただ、AMAZONNでは、鷺沢のこの本書ぐらいしか訳本が出ていない。日本ではまだまだ無名なのだ。
ステージはアメリカの中西部だろうか。カウボーイやラフティングが登場するアウトドアスポーツをやっている男どもがネタになっている。「愛しのろくでなし」とはそんなやつらのことだ。
一人の女に定着できないとか、女よりもスポーツを選んでしまうとか、女にとってこの上なく落ち着けない男どもに、それでも縋っていくしかない女たちのグチャグチャな模様が物語りになっている。
出だしはずいぶん乾いた文体で、書かれた場所を想像して読み進んでいったが、後半からいきなりのめり込んでしまった。
アウトドアっぽい読み物といえば、日本ではどこかオタクっぽいか、ストイックな男たちの独壇場になっている。それが、本書では有り余ったエネルギーのはけ口をスポーツか女か、あるいは両方に注ぎ込む、あまり精神的でない人々で物語が構成されている。いってみれば位相は日常と変わらないところにある。アメリカのアウトドアへの関わりがそうなのだろう。
日本のアウトドア系の読み物と比べてとても異質だが、並べて読まれてもいいほどのハードである。ハードなアウトドアスポーツと日常的な女の心の組み合わせ。おもしろい!
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