マルテの手記 リルケ
マルテの手記
著者:リルケ(ライナー・マリア・リルケ)
訳者:高安国世
出版社:講談社 文庫
発行:昭和46(1971)年11月15日第1刷
昭和52(1977年)年1月20日第5刷
レトリックの山
これは詩人のノートであり、詩人や詩の愛好者なら必読の文献である。日本でいうなら明治・大正に存命、活躍した詩人であるが、現代でもここに表現されているレトリックは参考になるはずだ。
都会に見かける通行人の奇行、よそ者にはまるで迷路に紛れ込んだかのような裏小路体験、精一杯身なりを整えて来たはずなのにそれでも見下したような態度をとる医者、これら書き出しの描写は花の都パリに限らず、東京へ上京したばかりの地方人にも思い当たることだろう。私もその点には共有できるものがある。
孤独な時空を経て、アパートにこもって書き綴った統合失調症気味の幻覚的な独白の山。しかしすばらしい比喩の連続には看過できない宝の山ともいえるのだ。
最初の100ページも読めば飽きてくる。あとは本書を常時携行して、数ページを時折り捲ってはリルケの世界を垣間見、堪能する、こんな感じで付き合うのがよろしいのではないだろうか。
本作品は一見すると自叙伝のような趣もあるが、リルケはプラハ生まれのドイツ系の人間であり、登場する一族はデンマークの伯爵家ということになっていて、フィクションである。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)


最近のコメント